1963年に行方不明となり、1987年に北朝鮮で生活していることが分かった寺越武志さんの母親による手記。武志さんは叔父二人とともに漁に出ていて遭難し、北朝鮮に救助されたというが、拉致された疑いがある。友枝さんは武志さんの一時帰国を求めている。
タイトルは仰々しいが、内容は金正日政権の幹部たちの経歴や権力構造についての冷静な解説になっている。ただし1994年に出た本の増補改訂版なので古い部分もある。
吉田康彦・進藤榮一編『動き出した朝鮮半島』(日本評論社)に対抗する位置を占める保守派研究者の論文集。朱建栄氏が中国政府の政策を解説するインタビューが非常に面白い。中国は1990年代には北朝鮮を改革・開放へと追いこむ政策を取っていたが、1995年頃に北朝鮮の崩壊を懸念する声が高まり、北朝鮮を危機から救ってアメリカに対する緩衝地帯として残す政策への転換が行われたという。
日朝国交交渉に「国としての誇り」の観点から反対する主張を展開。南北会談を朝鮮半島を巡る米中対決の構図の中で位置付けている。
北朝鮮の外交戦略には(1)大国を手玉に取る「振り子外交」と「分断戦略」(2)南北対話は「中露との関係悪化」「同盟の危機」で開始される「危機脱出戦略」である(3)対日戦略は「統一戦線部工作」と「日本への誤解」で失敗を重ねた(4)対米関係のセオリーは「米国なしには生き残れない」との現実的な判断である、というセオリーがあるという。また、北朝鮮の対日外交が統一戦線部による「工作」と外務省による「外交」の二本立てになっていたことも指摘し、日本の有力政治家が「工作」に呼応して外務省とは別個に「国会対策的」外交をしてきたことを厳しく批判する。
中朝国境で北朝鮮からの難民に面接し、精神病理学者の観点から飢餓の状況を推察する。子どもたちに「家族と家」というテーマで絵を描いてもらい、それを分析することで北朝鮮の社会を理解しようとする。
著者は1960年に「帰国事業」で両親とともに北朝鮮へ渡ったが、そこは宣伝とは違って「地上の楽園」ではなかった。帰国者は「敵対階層」と見なされて差別され、過酷な生活を強いられた。90年代の飢餓で餓死寸前となり、1996年に北朝鮮から脱出して日本に帰った。本書は北朝鮮での36年間を記す。
北朝鮮の農業事情、国際関係、日朝交渉の経緯、在日コリアンの問題など、様々な分野にわたる論文集。全体として北朝鮮寄りだが、優れた論文もいくつかある。
朝鮮人民軍の歴史と現在を概説する。学問的な厳密さはないが、惠谷治の駄本よりマシ。
1973年に発行された『映画芸術論』の抄訳。映画芸術論というより道徳の教科書というべき内容になっている。
「呑み込まれる韓国、日本の悪夢」というサブタイトルが付いているが、実際には反共的観点から北朝鮮の崩壊を期待し、予測している。長谷川慶太郎が「中国の共産党政権は携帯電話を認めたことで情報統制ができなくなり、崩壊に向かっている、いずれ北朝鮮も同じ道を歩む」という珍説を展開。
90年代の「核疑惑」のときにアメリカ国務省で北朝鮮担当官として勤務していた著者による手記。北朝鮮との交渉の過程が詳細に記述されており、ドン・オーバードーファーの『二つのコリア』(共同通信社)とともに「核疑惑」の実相を知る上で第一級の文献と言える。アメリカ政府の複雑に入り組んだ官僚機構のあり方や、決して一枚岩ではない北朝鮮の官僚機構の実情が描かれている。著者の観点からすれば、米朝協議を難しくしているのは韓国政府の横槍ということになる。
韓国に亡命した北朝鮮の元外交官が南北の社会を比較。南に“帰順”したとはいえ、必ずしも南の社会が全面的によいと思っているわけではなく、北にはある隣人同士の相互扶助の精神が南では失われていることや、南北に共通するせっかちな民族性なども指摘している。
著者は朝鮮新報の論説委員で、当然のことながら北朝鮮政府を支持している。日朝国交交渉についての北朝鮮側の主張を知るには最適の本、と言うべきか。
韓国の保守系月刊誌『月刊朝鮮』の編集長による南北会談批判。反共こそ大韓民国の国是、という観点に立ち、80年代以降の民主化した韓国の政権よりそれ以前の政権のほうを積極的に評価する。国家保安法の意義を白昼堂々と語るあたりは筋金入り。
黒田氏はソウルに長く駐在する産経新聞の記者。90年代に書かれた短い文章を集めただけの本で、タイトルが誇るほどの内容はない。
西岡力の『金正日と金大中』と同様、右翼的な観点から北朝鮮を批判し、日朝国交回復にも反対する。北朝鮮に対する武力行使まで公然と主張。
6月に行われた南北首脳会談の背景を解説。北朝鮮が南北首脳会談に応じたのは中朝関係の悪化や米朝関係の停滞が原因だ、南北共同宣言は北朝鮮の全勝か四勝一敗だ、など、注目すべき指摘が随所にある。
1970年にハイジャック事件を起こして北朝鮮へ渡った「よど号」グループのその後を書く。彼らが主体思想派に転向した経緯や、ヨーロッパでの日本人拉致の実情など、衝撃的な事実が次々と明らかにされている。
無実の罪で投獄され、5年後に奇跡的に釈放された女性の手記。過酷な刑務所の実態が描かれている。
韓国在野勢力の立場から最近の南北関係を分析し、反共イデオロギーに凝り固まった保守派を厳しく批判する。離散家族や非転向長期囚についての論文や黄ジャンヨプ氏と“対決”している対談を収めている第一部は韓国の状況を知る上できわめて有益。
反北朝鮮の立場から南北和解ムードを批判し、反金正日・反金大中の感情をぶちまける。最後は拉致問題に関連して「明白な侵略、主権の侵害だから、自衛権を発動すべきなのだ」とトンデモないことを主張している。
苦しい状況にある北朝鮮を嘲笑するかのようなタイトルと、黄ジャンヨプや惠谷治の本からの抜書きをつなぎ合わせただけの内容。こんな本を出す人間が大学教授というのは呆れるしかない。
食糧難のために北朝鮮から中国へ花嫁として売られた女性と、その後を追って北朝鮮から脱出した母親についてのルポルタージュ。母親は1960年に日本から北朝鮮に渡った「帰国者」でもあるため、帰国運動とその後の歴史についても触れられている。Web現代に同じ取材に基づく短い記事が掲載されている。著者のWebページもある。
北朝鮮の収容所に警備隊員として勤務し、韓国に亡命した著者による手記。政治犯収容所の過酷な実態を暴く。
著者は北朝鮮で設計技師として実績を上げたが、息子の韓国亡命をきっかけにピョンヤンを追放され、数年後に後を追って韓国へ亡命した。生い立ちから亡命までを書いた自伝的手記。
政治・経済から住民の生活まで、北朝鮮に関する基礎知識を与えてくれるコラム集。各コラムにはユーモラスなマンガが添えられており、欄外には韓国語講座もある。
昨年春に起きた不審船事件に関し、数名の元北朝鮮工作員へのインタビューを基にして実像を探る。ただし不審船事件そのものについての新しい知見はナシ。
鈴木邦男氏が井上周八氏と重村智計氏にインタビューしたもの。第一部に登場する井上氏はチュチェ思想国際研究所の理事長を務めており、「餓死者は一人もいない」「朝鮮戦争は南の侵略だ」と主張している。これを読むと北朝鮮に対する恐怖心が否応無しに高まってくる。第二部の重村氏はその恐怖心に裏付けを与えるような役割。
軍事オタク好みの駄本。
北朝鮮をめぐる国際関係の動向を北朝鮮に好意的な立場から分析する。
在日朝鮮人の古代史学者による自伝。著者は広開土王陵碑の研究により古代における日本の朝鮮支配を否定したことで有名。雑誌『季刊三千里』の編集長も務めた。朝鮮総連との様々な軋轢についても記されている。
著者は韓国の夕刊紙『文化日報』の記者。韓国での北朝鮮についての論争状況を垣間見ることができる。タイトルはキワモノ風だが内容は冷静な分析。
『「朝鮮戦争」取材ノート』(かもがわ出版、1995年)を文庫化し、書き下ろしの第五章「私の旅は続く」を加えたもの。第五章の大部分は著者が所属する日本共産党への批判。和田春樹を批判した第四章とともに必読と言える。
第五章の日本共産党批判についてはさざ波通信に「萩原遼元赤旗特派員による共産党批判について」が掲載されている。
1998年と1999年に中朝国境を訪れ、北朝鮮から逃れてきた様々な人たちを取材。『AWC通信』2000年6月号に著者インタビューあり。