朝鮮民主主義研究センター

2009年8月 2日

各党のマニフェストにみる北朝鮮政策

8月末の衆議院選挙へ向け、各党のマニフェストが出揃った。

自民党のマニフェストから外交政策の部分の見出しを拾ってみると、以下の通りだ。

  • 日米安保体制の強化と在日米軍再編の着実な推進
  • 防衛政策の強化と防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画の策定
  • 安全保障体制の基盤強化
  • テロとの闘い・国際社会の平和と安定のための貢献
  • 自衛隊の国際平和協力活動等の推進
  • 北朝鮮への断固とした対応
  • 積極的な外交展開
  • 経済・金融危機への対応、多角的自由貿易体制の確立
  • 国家の情報機能及び官邸の指令機能強化

「安全保障体制の基盤強化」として、北朝鮮の弾道ミサイルに対する防衛システムの整備がうたわれている。「北朝鮮への断固とした対応」は「北朝鮮問題は、拉致・核・ミサイル問題の包括的解決が基本であり、『拉致問題の進展がなければ、北朝鮮への経済支援は行わない』ことを前提に、外国政府及び国連や国際開発金融機関等の国際機関に対し、積極的な働きかけを行う。国家の威信をかけ拉致被害者全員の帰国を実現する。北朝鮮が核開発及び弾道ミサイル関連活動を完全に断念するよう、わが国は輸出禁止などの対北朝鮮措置を継続するとともに、安保理決議に基づいた行動を米国や韓国、関係各国と一致して取り組む。先の国会で廃案となった貨物検査特措法案につき、安保理決議1874等を踏まえ、次期国会で成立させる」とされている。

核・ミサイル開発には経済制裁、拉致問題については進展すれば経済支援、という構成になっている。しかし核・ミサイル問題が進展しなくても拉致問題が進展すれば経済支援、というわけではおそらくないだろう。政策の重点は核・ミサイル問題の方に置かれている。拉致問題解決のための具体案はない。

一方、民主党のマニフェストでは外交政策はこうなっている。

  • 緊密で対等な日米関係を築く
  • 東アジア共同体の構築を目指し、アジア外交を強化する
  • 北朝鮮の核保有を認めない
  • 世界の平和と繁栄を実現する
  • 核兵器廃絶の先頭に立ち、テロの脅威を除去する

東アジア共同体の構築、核兵器廃絶、という目標を掲げている点が自民党と違っている。「北朝鮮の核保有を認めない」という項は「北朝鮮が繰り返す核実験とミサイル発射は、わが国および国際の平和と安定に対する明白な脅威であり、断じて容認できない。核・化学・生物兵器やミサイルの開発・保有・配備を放棄させるため、米韓中ロなどの国際社会と協力しながら、貨物検査の実施を含め断固とした措置をとる。拉致問題はわが国に対する主権侵害かつ重大な人権侵害であり、国の責任において解決に全力を尽くす」となっており、拉致問題は核問題の中にまぎれこんでいる形だ。しかし政策の内容そのものはほとんど変わらない。

どちらのマニフェストにも平壌宣言や六ヶ国協議への言及がなく、対話の可能性が示されていない。「日朝平壌宣言にのっとり、拉致問題をはじめ核やミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を実現するとのわが国の基本的立場を堅持し、北朝鮮に対して解決に向けた行動を求めていくためには、6カ国協議を再開することが最重要です」という公明党のマニフェストや「北朝鮮と粘り強く交渉し、拉致問題の解決をめざします」という社民党のマニフェストとは違っている。(ついでながら不思議なのは、社民党のマニフェストに「日朝国交正常化」が入っていないことだ。)

自民党のマニフェストにも民主党のマニフェストにも、拉致問題解決のための具体的な政策、日朝国交正常化への道筋、六ヶ国協議への対応など、当然示されるべき点が示されていない。選挙の争点にもなっていない。どちらが選挙に勝っても意味のない経済制裁を漫然と続けるだけ、と考えるしかない。

昨年夏に金正日の病気が明らかになったことにより、北朝鮮の現体制の終わりが見えはじめてきている。選挙後に成立する政権は朝鮮半島情勢の大きな変化に対処することになるかもしれない。そのときに備え、北朝鮮なき東アジアの秩序を今から構想していく必要がある。その意味では民主党のマニフェストにある「東アジア共同体の構築」は注目に値するが、具体的な内容として書かれているのは残念ながら経済分野の協力だけだ。社民党のマニフェストには「北東アジア非核地帯と北東アジア地域の安全保障機構の創設」があるが、これは北朝鮮の体制が続くことを前提にしているので問題にならない。

結局、満足すべき北朝鮮政策を示している政党は一つもないことになる。

今週の北朝鮮(2009/07/25-2009/07/31)
投稿者 kazhik : 2009年8月 2日 11:38
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