朝鮮民主主義研究センター

2009年7月19日

北朝鮮の核を弁護する「反核運動家」

北朝鮮の核実験について、たんぽぽ舎の山崎久隆氏がアメリカとの対抗上やむをえないものとして弁護している

山崎氏は1996年に国際司法裁判所が出した勧告的意見を「核兵器の使用は国際人道法の原則に一般的には違反するが、国家存亡の危機に直面しているときにおいて違法との結論は出せない」と引用し、存亡の危機に陥っている国家の核武装は国際法違反ではない、とする。北朝鮮はアメリカによってまさに存亡の危機に陥っているのだから核武装は正当だ、というのだ。しかし、山崎氏の訳文は正確ではない。後半に該当する部分を原文に忠実に訳せば「国家の存亡そのものがかかっているような自衛の極限状況において、核兵器による脅迫または核兵器の使用が合法か違法かについて、国際司法裁判所ははっきりと結論を出すことができない」となる。「違法との結論は出せない」と訳せば合法と判断したかのような誤解が生まれてしまうが、そうではない。判断を回避したというのが事実だ。また、国際人道法の原則に一般的には違反する、という判断が示されているのだから、この勧告的意見はすべての国家に対して核廃絶を訴えていると考えるのが最も自然だ。現時点では合法とも違法とも言えないが、将来的には核廃絶が望ましい、ということだ。北朝鮮の核武装を正当化する余地は全くない。

現在必要なのは北朝鮮に対する制裁ではなく「北朝鮮という国の存在と生存を保障すること」だ、と山崎氏は主張する。しかしその程度のことなら既に実現している。2005年9月の六ヶ国会議の共同声明には「アメリカ合衆国は、朝鮮半島において核兵器を有しないこと、及び、朝鮮民主主義人民共和国に対して核兵器又は通常兵器による攻撃又は侵略を行う意図を有しないことを確認した」という文言が入った。北朝鮮がアメリカによって国家存亡の危機に直面させられている、という状況認識を裏づける事実はない。対北朝鮮戦争など誰も準備していないにもかかわらず、北朝鮮はなりふりかまわず核開発を進め、二度にわたって核実験を行った。六ヶ国協議は永遠に終わった、と宣言して2005年9月の共同声明を紙くずにしてしまった。山崎氏が引用した国際人道法の原則をもっとも熱心に踏みにじったのが北朝鮮なのだ。

私自身も北朝鮮の核武装がことさら問題だとは考えていない。アメリカをはじめとして核保有国はいくつもあるのだから北朝鮮にも核保有の権利はある。問題は核兵器そのものではなく、核兵器を必要とする国際関係の状況にある。しかし、国内における慢性的な食糧不足を放置したまま核開発に資源を投入し、国際社会のあらゆる反対を無視して核実験を強行し、仰々しい言葉で周辺国を脅迫してみせる北朝鮮のやり方は容認しがたいものだ。

山崎氏は「北朝鮮の政治体制を決める、あるいは変える権利を持つのは北朝鮮国民自身であるという当たり前の事実を受け入れる」べきだという。抽象的、一般的にはいかにもその通りだ。しかし、北朝鮮の人民は基本的人権をいっさい奪われており、政治体制を決める権利どころか自由に発言する権利すらないというのが誰でも知っている「当たり前の事実」であって、これを受け入れるのはまさしく人道に反する。北朝鮮の人民がみずから「政治体制を決める」ことができるよう、積極的に働きかけることこそ我々の義務でなければならない。

今週の北朝鮮(2009/07/11-2009/07/17)
投稿者 kazhik : 2009年7月19日 16:26
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