朝鮮民主主義研究センター

2009年5月10日

脱北者に対する聞き取り調査からみた北朝鮮社会

アメリカのピーターソン国際経済研究所が北朝鮮難民問題について4月29日にシンポジウムを開いた。マーカス・ノーランド研究員が脱北者への聞き取り調査をまとめたプレゼンテーション「北朝鮮難民:北朝鮮への窓と人道的関心の源」が興味深い内容を含んでいるので紹介したい。

聞き取り調査は2004年から2005年にかけて中国に住む1300人に対して行われたものと2008年に韓国に住む300人に対して行われたものからなる。うち核心階層は13.7パーセント、動揺階層は61.7パーセント、敵対階層は11パーセント。とくに重要と思われる項目は以下の通りだ。

  • 脱北の動機は、経済状況が56.7パーセント、政治的自由が27パーセント、不正行為への恐れが8パーセント。
  • 人道援助については、その大半を軍が受け取っていると考えている人が67.4パーセント、政府や党の幹部が受け取っていると考えている人が28.7パーセント。
  • 1990年代の飢餓の時期に私的な商売を行っていた人は61.2パーセント、飢餓以降の時期は77.3パーセント、経済改革以後は72.5パーセント。
  • 経済改革以後に腐敗が増えたと考えている人は、「まったく同意」と「同意」をあわせると89.4パーセント。格差の拡大を感じた人は84.4パーセント。
  • 社会的地位を向上させる最善の道は政府や党の幹部になることだ、と考える人は、飢餓の時期については73パーセント、飢餓以降の時期は83.8パーセント、経済改革以後は76.3パーセント。飢餓の時期については12パーセントが軍に入ることだと答えており、商売に携わることだという答えは三つの時期について8.1パーセント、12.2パーセント、17.8パーセントと着実に増えている。
  • 北朝鮮の現体制の維持を望んでいるのはわずか4.7パーセントで、93.7パーセントは韓国との統一を望んでいる。

これは一種の世論調査だ。我々は北朝鮮に住む一般市民が自由に回答した世論調査を見たことがない。脱北者という偏った枠内であるにせよ、このような形で北朝鮮市民の平均的な見解を知ることができたのは大きな進歩だ。

私的な商売についての項目からは、経済改革によって私的な商売が減ったことが伺われる。また、外部からは「先軍政治」は軍部の力を増大させたように見えるにもかかわらず、軍に入ることが社会的地位を向上させる道だと考える人がほとんどいない点も目を引く。

この調査の詳しい内容はいずれ出版されるだろう。期待したい。

今週の北朝鮮(2009/05/02-2009/05/08)
投稿者 kazhik : 2009年5月10日 21:34
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