北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会代表の三浦小太郎氏が3月14日に開かれた「アジアの難民と人権に関する東京セミナー」で脱北者の日本への定着について報告した。
三浦氏は日本に定住している脱北者を支援する活動に携わっており、その経験から脱北者には法的意識が欠けていることがあることを指摘している。具体的には生活保護制度の使い方が例として挙がっている。
彼らの多くは、この制度が国民の税金から支払われている事、生活保護の性格上、労働し賃金を得ればそれは報告しなければならないこと、また全額ではないが収入があれば保護には一定の削減がなされる事を中々理解しない。そして、北朝鮮に残してきた親族への送金のためには、福祉課に隠れて仕事を探す事になり、それが発覚した場合は多くのトラブルを生む。また一方では、所詮労働した分の賃金が保護から引かれるのならば労働の意味がないという、労働意欲の減退にもつながる。
法的意識が欠けている例としてもう一つ挙げられているのは偽装難民の問題だ。「韓国に一度亡命した脱北者が、定着に失敗し、ロンドンに偽造旅券で渡り、今現在中国から逃れてきたと偽って難民認定や生活支援を受けるケースが近年生じ、これが社会問題となっている」ということだ。三浦氏が挙げているのは海外の例だけだが、日本でもつい先日、脱北者の手引きによって中国人が脱北者を装って入国していた、という事件があった。
これらの問題は、脱北者は法的意識に欠けている、とまとめるべきものではないだろう。三浦氏も実質的にはそうしていない。脱北者に対しては生活保護ではなく期間限定の定着支援制度を提供すべきであり、偽装難民に関しては慎重かつ科学的な審査が必要だとしている。
偽装難民はそれほど多くないだろうし、今後も大きく増えるわけではないだろう。しかし生活保護の問題は現在すでにある。三浦氏が主張する通り、定着支援制度をつくることが必要だ。
生活保護制度は他に生計を立てる手段がないときにのみ使うべき制度だ。日本に来た脱北者に対して最初にこの制度の利用を薦めれば、モラルハザードが起こって当人が自立しなくなってしまうのは当然と言っていい。脱北者だけが特別に法的意識が低いというよりは、定着支援制度の代わりに生活保護制度を使うことに問題がある。生活保護制度は最低限度の生活を保障するためのものだが、海外から移ってきて日本で生活しはじめた人たちに必要なのはそれだけではない。日本の社会、日本の制度についての知識が必要だ。
脱北者に関して三浦氏が指摘していることは多かれ少なかれ他の国から移住してきた人たちにも当てはまるだろう。脱北者の定住に関する問題はもっと一般的な枠組みの中で扱うことができるはずだ。定着支援制度も脱北者にのみ特別に提供するのではなく、ほかの移住者に対して開かれたものであっていい。そういった議論が今後深まっていくことを期待したい。
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