朝鮮民主主義研究センター

2008年5月17日

新興成金の代弁者による食糧危機論

河信基氏がブログで「北朝鮮の食糧危機が悪化しない理由」という記事を書いている。市場経済の発展、外国からの援助、軍の備蓄食糧という三つの要因があるからだという。

第一の市場経済に関する彼の言葉はこうだ。

 ずばり言えば、食糧不足は市場の需給関係に影響を及ぼして価格高騰を招き、貧困層が困るということで、特権層、富裕層にはそれほど影響しないということである。
 単純計算して食糧自給率は80%台であるから、国民の20%、500万人台の人々が苦しむ計算である。

500万人の貧困層が飢えても大した問題ではない、というこの姿勢には驚かざるをえない。どんな飢饉であれ、まっさきに苦しむのは常に貧困層だということをこの人物は知らないのだろうか。それならば1990年代の飢饉も些細なことになってしまう。もっとも多い見積りでも350万人しか死んでいないのだからだ。

数年前の著書で、彼は市場経済の発展により新興成金が登場したことを肯定的に捉えていた。もともと彼は新興成金の視点でしか北朝鮮経済を捉えていなかったと言える。しかし、貧乏人は死んでもかまわない、と言わんばかりの発言までするとは思わなかった。

第三の軍の備蓄食糧に関しては、彼は中央日報の記事にリンクを張っている。韓国からの援助は軍の備蓄に回せ、という金正日の指示を伝えたものだ。記事を素直に読む者は「援助食糧は本来の目的から外れたところに転用されている」と考えるだろう。ところが彼の頭の中では全てが逆さまになる。備蓄されているのだから飢饉対策の最後の選択肢として使える、というのだ。軍が援助食糧を横取りしたのは本当の飢饉に備えるためだった、とでも思っているのだろうか。

外国からの援助はたしかに食糧危機を緩和するだろう。軍が横取りするとしても、それがさらに横流しされて市場に出回れば食糧価格は下がる。だが、当面の危機を援助によって脱することは、構造的な問題の解決をむしろ妨げることになりかねない。

河信基氏は食糧危機の原因には何の関心もないようだ。「洪水といった内的要因や国際穀物価格暴騰で北朝鮮の慢性的な食糧危機が深刻化しているのは、報道された通りであろう」とあっさり書いている。洪水が起こったという報道などないし、北朝鮮の食糧価格の上昇は世界的な上昇より急カーブなのは何故かが問題なのだが、新興成金の代弁者にすぎない彼にはどうでもいいことなのだろう。「日本も、制裁措置とは無関係に人道的支援に踏み切るべきである」「事は日本の人道主義精神や困った隣人への思いやりの心、良心や品格に関わる」という最後の主張もただ空虚なだけだ。

今週の北朝鮮(2008/05/10-2008/05/16)
投稿者 kazhik : 2008年5月17日 11:14
コメント&トラックバック

> 洪水が起こったという報道などないし

昨年8月の大水害のことをkazhikさんはお忘れなのでしょうか?

nomadのコメント(2008年5月19日 19:40)

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