朝鮮民主主義研究センター

シリアの核計画を北朝鮮が支援、とブッシュ政権が発表(2008年4月27日)
蓮池透さんが訪朝の意思を表明(2008年4月19日)
反市場政策で破綻へと向かう北朝鮮経済(2008年4月13日)
本格的に悪化してきた南北関係(2008年4月 5日)

2008年4月27日

シリアの核計画を北朝鮮が支援、とブッシュ政権が発表

シリアが昨年9月6日まで極秘に核施設の建設を進めており、北朝鮮が支援していた、とブッシュ政権が発表した。イスラエルが空爆によって破壊した施設だ。

事実そのものは以前にも報じられており、私も間接的に取り上げたことがある。この問題がきっかけとなって六ヵ国協議は空中分解の状態にある、という西村幸祐氏の分析に反対し、「シリアと北朝鮮の関係が明らかになれば六ヵ国協議の意義はむしろ高まる」と書いた。今回の発表に関してもいくつかのメディアが六ヵ国協議への悪影響を予想しているが、正しいとは思えない。そもそも問題の核施設は既に破壊されているのだし、昨年10月の六ヵ国協議の合意文書には「朝鮮民主主義人民共和国は、核物質、技術及びノウハウを移転しないとの約束を再確認した」という条項がある。既に終わっている問題だ。

今月上旬の米朝シンガポール合意により、近いうちに北朝鮮は核計画を申告し、アメリカは北朝鮮に対するテロ支援国家指定の解除と対敵通商法の適用終了を実施するだろう。北朝鮮にとっては大きな成果となる。しかし、それが紙の上での成果にすぎないこともすぐに明白になるだろう。米朝のあいだにはどのような友好関係も生まれていないからだ。

今週の北朝鮮(2008/04/19-2008/04/25)

2008年4月19日

蓮池透さんが訪朝の意思を表明

日本政府が4月11日に経済制裁の延長を決めたことに関連し、蓮池透さんが日本テレビ系列のニュース専門チャンネル「日テレNEWS24」に出演して「自ら北朝鮮に行って北朝鮮の当局に拉致問題の真相を問い質したい」と語った。

発言の全体は日テレNEWS24のサイトで確認できる。拉致問題は膠着状態に陥っており、日本政府は日朝交渉を進めて現在の状況を打開してほしい、というのが趣旨だ。蓮池透さんはそこで具体策を問われて訪朝の意思を明らかにしている。

たしかに拉致問題は膠着状態に陥っている。2004年の第二回日朝首脳会談以後は何も進展していない。拉致被害者の家族として蓮池透さんが苛立ち、日本政府が何もしないなら私自身が何かしたい、と考えるのは理解できる。福田首相は就任の際に拉致問題を「私の手で解決したい」と言っており、日朝交渉を進めようとする中で蓮池透さんの申し出を受け入れる可能性もあるだろう。

この発言に関しては荒木和博氏が特定失踪者問題調査会ニュースの中でコメントしている

 また、蓮池透さんの条件が整えば北朝鮮に行きたいという発言ですが、すでに家族会の役員でもなく、副代表を辞任する前から家族会の活動にほとんど参加していない透さんが被害者家族の代表として行けるはずもありません。「真相を明らかに」と言っても、「どうなっているのか」と聞いて「実はこういうことです」と話でもすると思っているのでしょうか。北朝鮮がそういう相手かどうかは薫さんに聞いてみるといいでしょう。
 もちろん、日本は北朝鮮や中国とは異なり民主主義の国ですから、透さん自身の思っていることをどんどん発言することは認められるべきですが、透さんが拉致問題の解決に役割を果たせるのは、薫さんに北朝鮮で見たことをもっと話させることではないかと思います。

以前、蓮池薫さんに拉致されかけたことがある、という珍奇な「証言者」が現れたとき、荒木氏が蓮池薫さんに対して冷淡なコメントを出したので驚いたことがある。今回のコメントも冷たいものだ。膠着状態に苛立つ気持ちは荒木氏も共有しているはずなのに、なぜ揚げ足を取って片付けようとするのだろうか。情がなさすぎる。透さんと薫さんが家族会や救う会の現在の方針に同調していないのは確かだろうが、だからといって冷たい言葉を投げつけるのは行き過ぎとしか思えない。

今週の北朝鮮(2008/04/12-2008/04/18)

2008年4月13日

反市場政策で破綻へと向かう北朝鮮経済

北朝鮮当局の市場統制に対して一万人の女性が抗議した、と先日伝えた「グッドフレンズ」のニューズレターが、今度は「肥料危機」を伝えている。耕作期が近づいているのに肥料や種子が足りないというのだ。朝鮮労働党は肥料の購入のために補助金を出すことを決めたが、地方の当局はこの決定に懐疑的だという。仮に中央が費用の70パーセントを出したとしても、横領があるので実際に地方が受け取るのは30-40パーセントになってしまうから、とのことだ。

肥料危機の背景には全般的な経済の行き詰まりがある。配給はますます滞ってきた。もっとも状況がいいはずの平壌でさえ4月から10月まで配給を止めることを決めたという。清津市のある住民は「市場での女性たちの抗議は食糧不足が引き起こした自然なできごとだった。伝えられている通り、清津市の6万世帯で食糧が足りなくなってきている。言いかえれば、一世帯あたり3-4人として約20万人が飢えている。労働者への食糧配給が止まり、女性の市場での売買が禁じられた場合、そういった家族は飢え死にするしかない」と語った。

また、協同農場が土地の一部を労働者に貸し出す制度は昨年につづいて今年も禁止されることになった。様々な理由で勤務先から給料を支払ってもらえなくなった労働者がこの制度で土地を借り、そこで農業を行って生きのびていた。禁止されたのは勤務先の企業所が正常に給料を支払えるようになったからではない。ある企業所のマネージャは「この制度が今年も禁止されるなら、私は労働者たちに企業所に来るよう言うわけにはいかない。私がまっさきに辞める。そうしないと労働者たちに殴り殺されてしまうだろう」と語った。

平壌市の官僚の発言が根本的な問題に触れている。「食糧事情は2002年から2004年にかけて好転したが、2005年に配給制度の再開が問題になってから再び悪化しはじめた。配給制度の再開は大変な誤りだった」ということだ。

2005年に配給制度の再開が伝えられとき、私は「配給の正常化は農業生産にマイナスの影響を与えるのではないか」と書いた。情報が乏しくてその後の状況がずっと分からなかったが、どうやら本当にそうなってきたらしい。2002年7月の経済管理改善措置以後、市場経済が拡大するとともに北朝鮮経済全体も回復してきたが、政府は市場経済の拡大を恐れるあまり経済の回復も否定してしまったのだ。

ニューズレターの最後にある論説記事は1990年代の飢餓を再現させないよう南北の政府が協力することを呼びかけている。だが、食糧事情が悪化したのは南北関係が悪化したからではなく、北朝鮮政府の経済政策が間違っているからだということは、当のニューズレター自身がもっとも熱心に伝えてきたところだ。

今週の北朝鮮(2008/04/05-2008/04/11)

2008年4月 5日

本格的に悪化してきた南北関係

李明博が韓国の大統領に就任してから一ヶ月が過ぎ、南北関係が本格的に悪化してきた。

北朝鮮は3月27日に開城工業団地の南北経済協力協議事務所に駐在する韓国側当局者を全員追放した。つづいて4月1日、『労働新聞』は李明博を初めて名指しで批判した。李明博は「非核・開放・3000」政策によって「邪悪な奸商、詐欺師の正体をさらけだしている」のだという。

「非核・開放・3000」政策は李明博が大統領選挙の何ヶ月も前に発表し、ずっと掲げつづけてきたものだ。彼が大統領に就任して一ヶ月も経ってからようやく「邪悪な奸商、詐欺師」だと批判しはじめるのは反応が鈍すぎる。民主主義を持たない国家にいると政権交代の意味が分からなくなるのだろうか。

ウィーン発 『コンフィデンシャル』 」は、李明博を名指しで批判したきっかけを北朝鮮の外交官に聞き、「南北間の経済支援や人道支援に対する韓国新政権の心変わり」という回答を得たという。そしてこう評する。

そのようなことは昨年末の李明博氏の当選段階で予想されていたことではないか。それを4カ月あまり「沈黙」を守り、韓国新政権への批判を控えてきたということは、金正日労働党総書記の熟練した「外交戦略」というより、「沈黙」以外の選択肢がなかった同総書記の「無策」を物語っているだけではないか。

まったく同感だ。太陽政策は終わったのだから、韓国側が南北関係の発展を主導していく可能性は小さくなった。「非核・開放・3000」政策は本質的には無政策だ。北朝鮮がこれまでの南北関係を維持したいなら自ら主導してそうすればよいし、そのチャンスはある。しかし北朝鮮側も韓国側と同様に無政策なら、南北関係は徐々に縮小していく以外ない。中朝関係とは異なり、南北関係は政治主導だ。政治が変わればあっさり終わってしまう脆さを抱えている。

今週の北朝鮮(2008/03/29-2008/04/04)