佐藤優氏がフジサンケイ・ビジネスアイに「北朝鮮の情報操作」というコラムを書いている。ドイツの新聞に<北朝鮮が作ったとされている偽ドルは実はCIAが作った>と主張する記事が出たことについて、これを北朝鮮の情報操作と推測するものだ。
佐藤優氏については以前著書を取り上げたことがある。日本の対ロシア外交に関して興味深い証言がなされており、対北朝鮮外交を理解する上でも役に立った。しかし、今回のコラムは粗雑すぎる。ドイツの新聞に出た記事は北朝鮮の工作によるもの、と言いたいなら、少なくとも北朝鮮の工作員と記事を執筆した記者のつながりを示さなければならない。記者に対してどのような工作が行われ、どのように情報が提供されたのか、説明しなければならない。しかしそのような説明は何もない。これではただの決めつけだ。
<偽ドルは実はCIA製>という主張も噴飯物だ。元の記事は偽ドルとCIAを結びつける証拠を何も示せず、ただ「この数年間、高セキュリティ印刷業界の代表者や偽造捜査官の間で、秘密の印刷所でスーパーノートを印刷しているのはアメリカのCIAだといううわさが広まっている」と書いているだけだ。「バカバカしい」の一言に尽きる。9・11テロの犯人は実はCIA、という説と何ら変わりない。
六ヶ国協議でアメリカは金融制裁の解除へと向かっている。もともとは紙幣偽造を理由とした法的措置だったはずだが、今では単なる取引材料として扱われている。アメリカ政府は紙幣偽造の決定的証拠を示さず、北朝鮮との交渉で紙幣偽造問題が解決されたという判断も示していない。この問題について、以前私は「北朝鮮側が形だけの再発防止を約束し、アメリカ側は金融制裁を解除する、という茶番で終わるのではないか」と書いた。残念ながら面白い茶番を見ることはできそうにない。情報のプロであるはずの佐藤氏が笑える珍説を述べてくれたことだけで満足するしかなさそうだ。
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