朝鮮民主主義研究センター

2004年10月24日

下斗米伸夫『アジア冷戦史』

主としてソ連側の史料に基づいて書かれ、ソ連、中国、北朝鮮を中心にしたアジアの冷戦史。

著者は中国革命と前後してソ連と中国のあいだで「パワー・シェアリング」が行われたことを明らかにしている。ロシアの北朝鮮専門家であるワジム・トカチェンコによれば、ソ連は朝鮮とベトナムの安全保障を中国に任せた。中国の冷戦研究者である沈志華は、朝鮮半島はソ連、ベトナムは中国が担当することになったと見ているという。いずれにせよ、中国共産党はアジアの共産党の中で特権的地位を占めていたことになる。

北朝鮮は当初はソ連の傀儡国家にすぎなかった。著者は、憲法、軍隊、指導者までソ連が決めていた、というロシアの歴史家アンドレイ・ラニコフの説を引く。朝鮮戦争の際、スターリンは金日成の開戦計画を承認する立場にあった。戦線が膠着すると中朝は停戦を求めたが、スターリンは応じなかった。しかしその後、金日成はフルシチョフのスターリン批判には同調せず、むしろ国内でソ連派や中国派を粛清して独裁化を進めた。ソ連の傀儡国家として生まれ、朝鮮戦争では中国の支援で敗北を免れた北朝鮮が、なぜソ連からも中国からも自立した国家になりえたのかは大きな謎だ。

核開発に関しては気になる問題が提起されている。ソ連は1946年から1947年にかけて核開発に多大な資源を投下し、100万人から200万人程度の飢餓を生み出した。中国は1950年代後半の大躍進政策で核開発を進め、2000万人から3000万人の餓死者を出した。北朝鮮でも、1990年代には核開発と飢餓が同時に進行した。因果関係があるのではないか、というのだ。

著者の本来の専門はソ連史だが、近年は『朝鮮戦争の謎と真実』や『金正日に悩まされるロシア』の翻訳を手がけている。実績のある研究者が北朝鮮に関心を向けてくれることは喜ばしい。


出版:中公新書、2004年9月
推薦度:★★★★★

投稿者 kazhik : 2004年10月24日 09:18
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