朝鮮民主主義研究センター

2004年8月29日

共同通信北朝鮮取材班『はるかなる隣人』

拉致、帰国事業、在日コリアンなど、日朝関係にかかわる様々なテーマを取材。

「遺言のつもりで、父のことを話しておきたいのです」と取材に応じた呉文子さんの父は、1962年に『楽園の夢破れて』を出版して帰国事業の実態を告発した関貴星さん。関さんは総連幹部として北朝鮮を訪問し、「楽園」の実態を知る。そして総連から離れ、家族の反対を振り切って告発本を出版。「私は両まぶたを閉じて、じっと耐えた。その網膜には北朝鮮で虐げられている数百万の同胞が写っては消えた。あの人たちはいま、必死になって光への窓口を求めている。私がこの役割を果たさずして誰が果たそうとするのか」と記した。呉文子さんは父と絶縁し、「身の証しを立てるため」に総連の活動にうちこむが、夫の李ジンヒは職場の朝鮮大学で激しい迫害を受け、数年の闘いの末に退職を選んだ。結局は父の主張が正しかったことに気づき、和解。

平壌でトウモロコシを研究していた李ミンボクさんは、主体農法は北朝鮮の農業不振の原因の30%程度にすぎない、と語る。集団農業に原因があるとみた彼は、研究用の畑でトウモロコシを栽培し、協同農場の五倍の収穫を挙げた。しかし、上層部に手紙を出して結果を報告したが「ばかなことを言うな」と忠告されただけだった。失望した彼は脱北を選んだ。

脱北者支援にかかわるグループ内での「企画亡命」をめぐる意見の相違も取りあげられている。「ボートピープル」計画で拘束されたソク・ジェヒョンさんの妻、姜恵媛さんは、韓国で開かれたユニバーシアード大会でノルベルト・フォラツェンさんと北朝鮮の記者が衝突したテレビ映像をみて「人の救出とテレビに映ること、どちらが大事なの?」と溜息をつく。一方、フォラツェンさんは「ボートピープル」計画で大量の拘束者が出たことを問われ、「でも、これだけ大きな話題になったし、資金援助を申し出るメールがたくさん届いている。難民の存在がクローズアップされたことが大事なんだ」と答えた。

石丸次郎さんと蓮池透さんの対談も収録されている。救う会幹部が日本は核武装すべきだと発言したり、救う会大阪のウェブサイトで靖国問題が取りあげられていることを挙げ、別の政治目的を持った人が拉致を利用している、と石丸さん。それに対して蓮池さんは「それは、私も憂慮している。わたしたちは、拉致された家族を取り返したいと運動しているわけで、その気持ちを了解してもらって、その一点で支援していただきたい。私も靖国の専門家でないし、触れたくない。北朝鮮打倒に拉致を利用するというのは不服」と応えている。

そのほか、北朝鮮への外国投資の破綻、9/17以降の在日コリアンの状況に関するエピソードもある。巻末には拉致被害者やその家族へのインタビューが収録されている。日朝関係を冷静に考えるうえで有益な書。

出版:共同通信社、2004年8月
推薦度:★★★★★

投稿者 kazhik : 2004年8月29日 13:26
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