北朝鮮本から見た日本の言論状況

なぜ北朝鮮の問題に関心を持ったか

私が北朝鮮の問題に真剣に取り組もうと思ったのは1999年頃です。その理由は二つほどあります。

第一の理由は飢餓や人権侵害の実態を知ってショックを受けたことです。『Newsweek』に見開き二ページで掲載された写真を覚えています。やせほそった子どもが数人並んでいる写真です。飢餓なんてアフリカあたりの話だと思っていたので、すぐには信じられませんでした。姜哲煥と安赫が強制収容所の実態を書いた『北朝鮮脱出』もすさまじい内容でした。姜哲煥は10歳のときに祖父がなんらかの理由で逮捕され、同時に家族もろとも収容所へ送られます。安赫は軽い遊び心で中国へ越境し、数ヵ月後に北朝鮮に戻って当局に自首したらスパイの疑いをかけられ、収容所送りです。二人は私とほぼ同年齢です。この問題はとうてい見過ごせないと思いました。

第二の理由は、日本の政治状況のねじれに危機感を覚えたことです。左翼的な観点から北朝鮮の人権問題に取り組んでいる人は1999年の時点ではほとんどいませんでした。北朝鮮の人権問題として最もよく知られているのは拉致問題で、これに取り組んでいる「救う会」は保守派の運動という状況でした。人権問題はどちらかと言えば左翼の得意分野のはずなのに、北朝鮮に関しては右翼の側が積極的に取り組んでいる。つまり大雑把にいって右翼のほうが正しく、左翼は間違っている。このままでは大変なことになる、と感じました。私が恐れていたことは日朝首脳会談で金正日が拉致を認めたことで現実になりました。「救う会」の佐藤勝巳さんは私からみると単なる排外主義者ですが、そういう人が拉致問題のおかげで世論の支持を受けるようになってしまいました。拉致問題に関しては正しかったわけですから当然ですが、残念です。

ともあれ、この二つぐらいの理由で北朝鮮の問題を真剣に考えはじめ、北朝鮮関係の本をたくさん買い込んで読み漁りました。同時に東京で行われる北朝鮮関係の集会にはできるかぎり足を運びました。しばらく考えた末、具体的な活動の第一歩として、Webサイトを立ち上げることにしました。「朝鮮民主主義研究センター」というサイトで、2000年の夏頃から準備を始めて2001年の正月に公開しました。略称は朝民研としています。

朝鮮民主主義研究センター

朝民研の目的は、北朝鮮論議の一つの枠組を提示することです。排外主義とは一線を画したところで北朝鮮の飢餓や人権侵害を議論していきたい、というのが基本的な趣旨です。

サイトの中身は、ニュース記事へのリンク、新刊書の紹介、基礎知識の解説、北朝鮮関連サイトへのリンクです。頻繁に更新しているのはニュースのコーナーと新刊書のコーナーです。

ニュースのコーナーはWeb上に出る北朝鮮関連のニュース記事にリンクしています。とくに重視しているのは飢餓や人権侵害の報告など、北朝鮮の民衆の現状を知る上で有意義だと思う記事です。市民団体発のニュースは優先的に取り上げています。ただし拉致問題はおざなりになっています。私が追いかけなくても、しっかりやっているサイトが他にあるからです。外交関係のニュースは、小泉が訪朝したとか六ヵ国協議が行われたとかいった重要な事実を伝えるものだけを取り上げています。「政府は……の方針を固めた」という類の、単に将来の見通しが書かれているにすぎないものは無視しています。

新刊情報のコーナーでは、毎月出る北朝鮮関連の新刊をすべて読み、簡単な紹介文を書き、五段階で評価しています。

すべての北朝鮮本を読む、というのは、日本の言論状況を正確に把握したいと思ったからです。表紙と目次だけを見て選んでしまうと、嫌いな人たち、具体的には排外主義者や北朝鮮シンパの人たちがどんなことを言っているのか分からなくなってしまいます。そういった人たちも含め、北朝鮮に関する見解の見取図を頭に入れておきたいわけです。

言論状況を把握する、という目的のためにはテレビや新聞や雑誌も追いかけたほうがいいのは確かです。しかしそれらも含めてすべて追いかける時間は私にはありません。また、マスメディアには出るが本は書かないという人は、北朝鮮に関して本を書けるほどのまとまった見解を持っていない人だと思います。そういう人たちはほかの専門家の説を参考にして言ったり書いたりしているはずです。それなら少数の専門家が書く本だけ読んでいればいいのではないか。

テレビ、新聞、雑誌は寡占状況にあり、偏っているのに対し、本は零細出版社でも出せる、という事情もあります。すべてのテレビ番組をチェックするのと、すべての本をチェックするのとでは、後者のほうがチェックできる言論の幅が広いと考えられます。

ただ、すべての新刊書を読む、という方針にも問題はあります。本なら一定の水準が期待できる、といっても、やはり読む価値がない本もたくさん出ます。ほかの分野の有名人が書いたものはひどいものが多いと言えます。具体的には長谷川慶太郎、深田祐介、橋爪大三郎などです。北朝鮮の専門家ではないし、運動の世界で影響力があるわけでもないので、私は読む気がしません。

新刊書は毎月数冊出るので、優れた本でも飛ばし読みになってしまうのも問題です。研究論文を集めた本など、本来なら時間をかけてじっくり読み、関連の資料にもあたって検討したいのですが、そうしている時間がありません。特定のテーマを掘り下げる時間も取れません。1990年代以降の飢餓は非常に重要な問題ですが、研究者の世界でもマスコミの世界でもほとんど議論されていないように感じます。

私のサイトではそれぞれの新刊書を五段階で評価しています。北朝鮮に対する認識を深めてくれるものは高く評価し、やたらと北朝鮮を賛美、または非難している本は低く評価しています。政治的な立場の違いはできるかぎり評価に含めないようにしています。最近は直接知っている人がひどい本を書いたりして困ることもありますが、友人知人だからといって甘く評価したことはないつもりです。

2000年以降の新刊書の概観

では、具体的に2000年以降の新刊書をざっと見てみたいと思います。

まず、拉致問題に関しては、2000年に2冊、2001年に0冊、2002年に7冊、2003年には4冊が出版されています。2002年の日朝首脳会談の前と後ではっきり状況が違っています。

日朝首脳会談の前に書かれたものはジャーナリストと拉致被害者家族によるものが中心です。石高健次さんの『金正日の拉致指令』『これでもシラを切るのか北朝鮮』、高世仁さんの『拉致』、高沢皓司さんの『宿命』などがあります。石高健次さんは横田めぐみさんのケースを最初に報じた人、高世仁さんは同じケースに関して安明進証言を引き出した人です。高沢皓司さんはよど号グループのケースについて詳しく書いています。家族によるものとしては横田早紀江さんの『めぐみ、お母さんがきっと助けてあげる』や寺越友枝さんの『生き別れて37年 北朝鮮にいる息子よ わが胸に帰れ』がありました。

日朝首脳会談の後はあらゆるマスコミがこの問題を報じるようになりました。どういうわけかジャーナリストが個人名で出した本はなく、代わりに「救う会」の佐藤勝巳さん、西岡力さん、荒木和博さんがそれぞれ本を出しています。そのなかでは荒木さんの『拉致救出運動の2000日』がいい本だと思います。「救う会」の地道な運動の歩みがよくわかります。家族によるものとしては蓮池透さんの『奪還』や家族会が共同で書いた『家族』があります。拉致問題がさかんに報じられるようになった状況に反対する趣旨のものも出ています。人権と報道・連絡会の『検証・「拉致帰国者」マスコミ報道』はいわゆる北朝鮮バッシングを批判したものです。拉致問題に向き合おうとせず、それに関するマスコミ報道だけを非難しています。特にひどいと思ったのは、『週刊金曜日』が曽我ひとみさんの家族のインタビューを掲載したことを批判せず、逆に擁護したことです。人権と報道・連絡会はマスコミによる人権侵害を厳しく批判してきたのに、北朝鮮だけ、『週刊金曜日』だけは特別扱いにしているとしか思えませんでした。それで自分のサイトに批判を書いたところ、人権と報道・連絡会の関係者から罵詈雑言にあふれた反論が返ってきました。太田昌国さんの『「拉致」異論』は左翼や進歩派が拉致問題を過少評価してきたことと日朝首脳会談以後に保守派が拉致問題を利用して国家主義を煽っていることの双方を批判しています。左翼系の人が拉致問題についてまともなことを書いたのはこれが初めてです。

不思議なのはジャーナリストによるものがないことです。複数のジャーナリストが書いたものを集めたムック形式のものがいくつか出ているだけです。拉致事件の全貌を明らかにしようとする努力が見あたりません。報道があふれている割には拉致事件そのものについての知識はあまり増えていないのです。

難民問題は、テレビや新聞では頻繁に報道されているのに本は少ないという分野です。2000年が3冊、2001年が1冊、2002年が2冊、2003年が1冊です。2001年と2003年の本は医療援助で北朝鮮に滞在していたノルベルト・フォラツェンさんが書いたもので、2002年の2冊はジャーナリストの石丸次郎さんが書いたものです。石丸さんの『北朝鮮難民』は難民問題の入門書として文句なしに推薦できます。しかし石丸さん以外には専門家と言える人はいません。北朝鮮難民救援基金の加藤博さんあたりが書いてくれると嬉しいんですが、本人はそのつもりはないようです。

脱北者の手記は北朝鮮本の主流と言っていいと思います。毎年5,6冊のペースで出ています。北朝鮮の民衆の生活状況や、脱出した人たちがどのようにして韓国や日本へたどり着くのかを知りたいと思ったとき、脱北者の手記はほとんど唯一の手段です。ただ、脱北者というのは北朝鮮を捨てた人たちなので、北朝鮮のひどさを強調しすぎる傾向があると思います。この点に関して重村智計さんは「自分が体験したことしか書いていないのが、信頼できる手記だ。いたずらに北朝鮮を批判したり非難したりする記述の多いものや、人から聞いた話を書いているものは信頼度が落ちる」(『北朝鮮データブック』)と言っています。この基準を今年出た本にあてはめてみると、姜哲煥さんの『平壌の水槽』や金龍華さんの『ある北朝鮮難民の告白』は信頼でき、尹大日さんの『北朝鮮・国家安全保衛部』や黄万有さんの『北朝鮮人喰い収容所』は信頼できない、ということになります。姜哲煥さんは10年にわたって強制収容所を体験した人で、金龍華さんは脱北後14年にわたって中国や韓国や日本で放浪したり捕まったりしていた人です。

尹大日さんは北朝鮮の国家安全保衛部、日本で言えば公安警察にあたる機関で勤務していた人で、現在は韓国で脱北者同志会の副会長を務めている人です。この本は国家安全保衛部がどんな機関かを解説しています。韓国へ来てから得た知識かと思える部分もあって、重村さんの基準に照らせば信頼できないのですが、私は脱北者の手記としてではなく北朝鮮の国家機構の概説書として価値があると思いました。北朝鮮本はたくさん出ていますが、北朝鮮の体制はどのように成り立っているのかが分かる本はほとんどないのです。

北朝鮮の経済や社会について書かれたものはほとんどありません。2000年の『北朝鮮経済論』や2001年の『北朝鮮の農業』は韓国の研究者によるもので、非常に地味な本です。残念ながら日本の研究者による本は一冊もありません。2002年の『金正日「改革」の虚実』は日経の記者によるもので、金正日政権が一部の地域で限定的に進めている開放政策や南北共同で進められている鉄道の連結事業などが報告されています。新聞記事を寄せ集めたような内容で、分析的な視点はありません。

宮塚利雄さんの『浮浪児と美女軍団 北朝鮮の暮らし』は北朝鮮で作られた様々なモノを通じて北朝鮮社会を知ろうとするものです。教科書、肌着、貯金通帳、石鹸などが写真つきで解説されています。オタク的ですが、北朝鮮社会を物的証拠に基づいて理解しようとしている本と言えます。

アンドリュー・ナチオスさんの『北朝鮮 飢餓の真実』は1990年代以降の北朝鮮の飢餓を分析しています。ナチオスさんは「ワールド・ビジョン」というアメリカのNGOの副会長を務めていた人で、北朝鮮の飢餓に早い段階から注目し、その深刻さを世界に訴えた人です。その後ワールド・ビジョンをやめ、自由な立場で中朝国境で難民の聞き取り調査を行ってこの本を書きました。自由な立場で、というのは、難民の調査をしていることがわかるとワールド・ビジョンの北朝鮮での活動に悪影響が生じるからです。現在はアメリカの国際開発局(USAID)の局長です。300万人が死んだと言われているにもかかわらず、本格的な研究はこれだけです。北朝鮮は国際社会に援助を要請しながら飢餓の実態調査は拒否するという姿勢をとりつづけたので、本当に飢餓が起こっているのかどうかを判断するのは非常に難しかったようです。この本には乏しい情報から少しずつ飢餓の実態に迫っていった経緯がこまごまと記されています。また、食糧援助に関するアメリカでの論争も紹介されています。ナチオスさんは「飢えた子どもは政治とは関係ない」というレーガン大統領の方針を支持する立場で、援助と外交をリンクさせようとしたクリントン政権を批判しています。

残念なことに、北朝鮮への人道支援をつづけている人たちはほとんど発言してくれません。集会などで人道支援の状況について話してくれることはときどきあるし、興味深い話もあるんですが、そういう話が本になったことはありません。ノルベルト・フォラツェンさんの『北朝鮮を知りすぎた医者』やマイク・ブラツケさんの『北朝鮮「楽園」の残骸』のような援助活動から離れた人の本があるだけです。本を書くことで活動に支障が出ることをおそれているのかもしれません。北朝鮮への人道支援をしている、というと問答無用で叩いてしまう人がいるのも問題です。しかし私は人道支援に関わっている人たちにはもっと積極的に発言してほしいと思っています。

外交に関しては毎年たくさん本が出ます。左翼・進歩派の北朝鮮関連本はこの分野に集中しています。今年出た本では『どうなる日朝国交交渉』『日朝交渉 課題と展望』『日朝関係の克服』『東北アジア時代への提言』『北朝鮮とどう向きあうか』と5冊も出ています。外交論議の分野は国家権力同士の関係しか問題にしないので、飢餓や強制収容所や拉致を取り上げる必要がないからだと思います。

『アメリカと北朝鮮』は非常に興味深い論文集です。これは外交の分野で権威のある『フォーリン・アフェアーズ』という雑誌に載った論文を集めたもので、アメリカの強硬派から穏健派まで様々な論者の主張を知ることができます。私が感心したのはビクター・チャさんという韓国生まれの人が書いた論文です。ブッシュ政権の北朝鮮政策を「強硬なエンゲージメント政策」と特徴づけています。武力行使を第一の選択肢にしていないという点でクリントン政権が進めた普通のエンゲージメント政策や韓国の太陽政策と同じように見えるが、北朝鮮の体制崩壊を狙っている点で本質的に違う政策だ、ということです。

ケネス・キノネスさんの『北朝鮮 米国務省担当官の交渉秘録』『北朝鮮II 核の秘密都市寧辺を往く』は真っ先に推薦できる本です。この人は1994年の米朝枠組み合意のときにアメリカ国務省の北朝鮮担当官だった人で、その後枠組み合意の履行にも携わりました。一冊目は枠組み合意までの米朝交渉、二冊目では枠組み合意の履行作業が回想されています。北朝鮮の官僚とのギリギリの交渉が詳しく書かれています。北朝鮮の官僚機構が理解できると同時に、アメリカの外交の実態をかいま見ることもできます。

軍事は難民問題と同様に意外と本が少ない分野で、毎年2,3冊程度です。六ヵ国協議をみれば分かるように国際社会にとっての北朝鮮問題の中心は核問題なのですが、北朝鮮の核開発について書かれた本は西岡力さんの『テロ国家・北朝鮮に騙されるな』と神浦元彰さんの『北朝鮮消滅』ぐらいしかありません。西岡さんは北朝鮮が既に核ミサイルを持っているという立場で、神浦さんは持っていないという立場です。

イラクの次は北朝鮮かもしれない、ということで、今年は朝鮮半島で戦争が起こることを想定した本もいくつか出ました。ブッシュ政権の対テロ戦争に便乗した動きと言えます。『朝鮮有事!』『北朝鮮<空爆>へのシナリオ』です。タイトルは仰々しいんですが、どちらも中身は冷静な分析になっています。やみくもにテポドンの脅威を煽ったりアメリカによる軍事攻撃を主張したりする内容にはなっていません。おそらく、出版社は宣伝目的で派手なタイトルをつけるが執筆者はそれほどいいかげんなことは書けない、ということだろうと思います。いいかげんな執筆依頼に応えなければならない軍事の専門家には同情せざるをえません。

「北朝鮮バッシング」は支配的な傾向か?

最後に「北朝鮮バッシング」は支配的な傾向なのかどうかを考えてみたいと思います。

今年のはじめに和田春樹さんと高崎宗司さんの編著で『北朝鮮本をどう読むか』という本が出ました。彼らの言う「北朝鮮ネガティヴ・キャンペーン」に対抗することを意図したものです。佐藤勝巳、萩原遼、ノルベルト・フォラツェン、李英和といった人たちの本を取り上げて批判しています。萩原遼さんについての章は「いくつものペンネーム、いくつもの人生」で、萩原さんが過去に複数のペンネームを使ってきたことを揶揄しています。フォラツェンさんについての章は「壁を壊そうとしてつくってしまう男」で、彼がアメリカや日本の反北朝鮮グループと結び付いていることを問題にしています。こういうタイトルの付け方から分かるように、この本の内容は彼らが「反北朝鮮」と見なした人たちに対する誹謗中傷だけです。ネガティヴ・キャンペーンとはこういう本に対して使われるべき言葉だと思います。ここで誹謗された人たちが裁判に訴えなかったのは奇跡です。

私の目からみても「北朝鮮ネガティヴ・キャンペーン」と言える本はたしかにあります。西岡力さんの『金正日が仕掛けた「対日大謀略」拉致の真実』は、日朝首脳会談で北朝鮮側が伝えた「拉致被害者のうち8人は死亡している」という説明を謀略と断定しています。工作活動に関わっていて表に出せないから死んだことにした、とのことです。それ自体はその通りかもしれませんが、証拠がありません。死んだという証拠はありませんが生きているという証拠もない。つまり生死不明というのが妥当なところだと思います。萩原遼さんの『拉致と核と餓死の国 北朝鮮』は、90年代の餓死は金正日による計画的殺人だったのではないか、という仮説を提示しています。敵対階層を餓死させて反乱の目を摘むことを意図したというわけです。しかしそんなことが言える根拠は何もありません。計画的な殺人なら国際社会に対して人道援助を要請するわけがありません。飢餓に関して金正日に責任があるのは確かですが、意図的に殺したというのは暴論です。この二人のように北朝鮮を批判するためなら手段を選ばないやり方は「ネガティヴ・キャンペーン」と言われても仕方がないと思います。

しかし、北朝鮮ネガティヴ・キャンペーン、または北朝鮮バッシングなどという言葉で現在の日本の風潮が批判される場合には、北朝鮮の体制に批判的なものは全部いっしょくたになっています。拉致問題の報道や脱北者の手記までが「反北朝鮮」というレッテルで切り捨てられています。しかし、重要なのは反北朝鮮か親北朝鮮かではなく、人権や人道の立場に立つのか立たないのかだと思います。人権や人道という観点から見た場合、拉致被害者の救出や脱北者に対する支援を訴えるのは「ネガティヴ・キャンペーン」というより「ポジティヴ・キャンペーン」です。拉致問題のおかげで国家主義や排外主義が強まっている、日本の状況はどんどん悪い方向へ向かっている、というのは一面的な見方だと思います。私は国家主義や排外主義の傾向がある本には低い評価をつけてきていますが、そういう基準でも一覧表に出ている136冊のうち57冊が五つ星評価です。推薦できる本は非常に多いのです。


朝民研