「週刊金曜日」が平壌で曽我ひとみさんの家族にインタビューし、11/15号に記事を掲載した。お母さん(ひとみさん)は10日で帰るはずだったのにまだ帰ってこない、日本政府は約束を破った、お母さんを早く帰してほしい、という内容のものだ。
曽我ひとみさんは11/14に訪れた「週刊金曜日」の記者に記事を見せられて動揺し、当日の予定を全てキャンセルした。「家族会」や「救う 会」は「週刊金曜日」を北朝鮮の政治宣伝に加担しているとして厳しく批判した。
このインタビュー記事について、「週刊金曜日」編集長の岡田幹治氏は「読者のみなさんの多くは、北朝鮮側に思惑があることを知ったうえで記事を読んでくださるに違いない」と説明した。「週刊金曜日」の編集委員をつとめている筑紫哲也氏は、11/14のテレビ番組で、利敵行為と言われようとも事実を伝えるのがジャーナリストの仕事だ、と論じた。11/15に発行された「週刊金曜日」には、インタビュー記事のほか、「『永住帰国』で見えてこない残された家族の気持ち」という粟野仁雄氏の記事が掲載されている。北朝鮮に残っている拉致被害者の家族の問題を指摘して日本政府による「永住帰国」の決定を批判するものだ。
「週刊金曜日」は拉致問題に関して一貫して冷淡であり、9/17以後もその編集姿勢に対する反省は一切ないままに日朝交渉推進キャンペーンを展開していた。その中で出てきたのがこのインタビュー記事である。平壌に残された拉致被害者の家族の声を聞く、という体裁をとってはいるが、そもそも北朝鮮には言論の自由も基本的人権も存在せず、一般市民の声といえども国家権力の完全な監視と統制の下にある。したがって、インタビューに現れたのは「残された家族の気持ち」ではなくてその否定であり、自由な意思の表明というよりむしろ拷問による自白のようなものだ。これが直接の人権侵害でなくて何だろうか? 利敵行為と言われようとも事実を伝えるべきだ、などという一般論で片付けてよい問題ではない。利敵行為よりもっと悪いのだ。
11/15号にはアムネスティ日本の寺中誠氏へのインタビュー記事も掲載されている。その中で寺中氏は、北朝鮮は「世界で最も人権状況に関する情報の公開性が低い」、と指摘している。曽我ひとみさんの家族にインタビューする前にやるべきことは山ほどあるのだ。過ちを改めるのに遅すぎるということはない。編集部は政治的な都合で現実から目をそむけるのをやめ、北朝鮮の民衆の「心の声」を聞く努力をするべきだ。